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実験やめたった シマエナガ編

劇団「実験やめたった」の活動報告

某バンドサークルのコンピアルバムにOBからのコメント

 

いきさつ

 筆者が活動していたバンドサークルの後輩の皆さんが、オリジナル曲を作って集めてコンピレーションアルバムを作った。今回のアルバムは去年に引き続き2作目であり、筆者は第1作目の出来が良かったので今年のアルバムの出来を楽しみにしていた。というわけで筆者は先週の土曜に集会に顔を出してそのCDを手に入れた。取り計らってくれたおおもりくん、サークル長のかいせいくんに感謝したい。

  筆者はこのアルバムを大学への道中の車内で流しているが、なかなかの出来栄えで後輩のみなさんの努力が感じられた。各バンドのメンバー、そして編集に携わったkzくん、おおもりくん、ないとうくん、たいへんお疲れさまでした。

 

 この記事では、OBである筆者が、このアルバムを聞いた感想やコメントを述べる。

 

なぜオリジナル曲を作るのか

 音楽制作にはかなり多くの苦労をともなうものの、それらを経て完成した作品というのは一生の思い出に残る。その時々で自分の持つ技術を総動員して作った作品は、後から振り返ったときに自分の音楽家としてのステップアップの記録となる。また一緒に苦労して製作したメンバーは必ずこの先も長い付き合いになる。筆者も過去に何枚かオリジナルアルバムを作っているが、筆者が学部生の頃に作ったアルバムの製作メンバーとは今も交流があり、いまだにいつも「あれほどのものをよく作ったなぁ」という話になる。

http://sound.jp/himo/top.html

 

 また自分で音楽を作るという道のりを経ることで、音楽を楽しむ観点が増える。我々バンドで楽器をやっている人間は、音楽の中で様々なパートが音楽の全体を構成していることを知っている。それと同じく、作曲、編曲、レコーディング、ミキシングの経験を実際にやると、市販されている音楽が実は職人の技術によって製作されていることがわかる。音楽を聴いていて「ここはなんでこのメロディなんだろう?」「なんでこの歌詞で、コード進行で、この表現なんだろう?」と思ったとしても、考えた結果「やはりこれがベストだ」と納得させられてしまい、これがプロの技なのだと感服する。こうした曲の魅力がわかるのは音楽家の特権である。

 

 というわけで、ちょっとでも「曲をつくりたいな」と思っている若手のみなさんは、是非オリジナル曲の製作に挑戦してもらいたい。重要なのは羞恥心を取り払い、一発でも曲を形にして人目に晒すことである。表現したいものがなかなか決まらないという場合は「おっぱい揉みたい」でも「教授○ね」でも適当に決めればいい。まず何でもいいから何かデモ音源を作って、何人かで何かやっていると何かができてくる。音楽理論などを勉強するのはそういった曲を数曲作ったその後でいい。

 

筆者がコメントを公開する理由

 筆者がこうしてコメントをするのは、テンション的にコメントをしたくてしょうがなくなっている為であるが、わざわざネット上で見える形で公開するのは、実際に曲を仕上げた後輩のみなさんのステップアップを願ってのこと、また筆者が言ってることがおかしかったら遠慮なく反論とか指摘を頂きたいという理由である。音楽とはコミュニケーションであり、曲を聴いた人からのコメント、フィードバックが不可欠である。音楽家としての成長とは、こうした意見を取捨選択して、最善の表現を追究することでなされていくものだと思う。筆者はつねづね「自分の音楽には何かが物足りない」という「何かとは何だ」と問いかけを持ちつづけ、様々な実験を重ねて音楽の理解を得てきたつもりである。筆者は今回、極力コメントの内容を具体的にしたつもりで、この意見が後輩の皆さんの何かしらの助けになればと思う。これは若手の意欲を削ぐかもしれないリスキーな事であるが、これも(最近ほとんど楽器を触っていないけど)筆者の音感の鍛錬、音楽活動の一環だと思ってやる

 

 以下、各曲に対するコメントである

 

ラボ

 もうこれはすばらしい完成度である。曲の雰囲気もしばくんのボーカルと相まって爽快な感じが良い。アルバムの1曲目として最適である。各パート全部すばらしいが筆者はドラマーなので特にドラムを褒めたい。イントロから古賀くんのアクセントの効いたタムがよく鳴って曲がシャキっとする。ドラムの一つ一つの音がクリアでリズムが正確に叩けているのがよくわかる。サビのコード進行が洒落ていて、ともすれば和音が微妙に変な感じになってしまうところが、音作りと音符の積み上げ方がしっかりしているので良くまとまっている。

 ただ、Bメロ(♪1,2,3で飛び出して)、サビ(♪見たことも無い)が良いフレーズなのに曲の中で一回しか登場していなくてもっとききたいなという気分になる。曲の長さをまだ長くしても良さそうなのでもうちょっと繰り返しがあってもいい。そして筆者はかなたむが卒業してしまったので非常に悲しい。しゅんちゃんは博士課程がんばれ。

 

カルネ

  このバンドは男女ツインボーカルという構成で歌のメロディーもかっこよく、バンドとしての特徴が出せていると思う。しかしイントロの和音がちょっと難解すぎないかなと思う。この曲は冒頭からしばらく聴いていてAメロの最初のコードのFmが聴こえたところでやっと曲の調がファを主音とするへ短調であることがわかる。なぜイントロの調性が分かりにくくなっているかというと、曲の一番最初の音がファ#(ファに対して短2度)で、さらに2番目の音がシ(増4度、トライトーン)で、いきなり要取扱注意の音から始まるからである。というわけで少なくとも最初の音をファにする。そしギターの音色をクリーントーンからディストーションをかけて音の厚みを増し、ファ→シ→シb→ラbの動きを明確にするのがよいのではないかと思う。

 

きつね

 インスト曲でこれだけフレーズを多彩に展開していけているのはさすがである。またまたドラムを褒めると、いとけんくんのドラムが細かいフレーズであってもちゃんと叩けていてすばらしい。もし可能なら、曲が盛り上がって来たところでバスドラムがサンバキックになると、多分筆者は感激のあまりしぬ。

 注文をつけるならば、0:35くらいからのピアノがモチーフを弾くところは1オクターブ高くてもよくて、またギターメインの場所は、初めはこのモチーフを基本にしたフレーズにして、徐々にアレンジを加えて発展していくと主題がはっきりすると思う。

 この曲のようにギターとピアノが共存する曲は特にギターの音作りが難しい。ギターの音色をフレーズ単位で細かく調整して、そのときどきで音が細くならないよう、出しゃばりすぎないように気をつけたい。

 

Boars

 もはや貫禄すら感じられる演奏である。演奏のテンポ的な意味でも、表現したい事の方向性が去年からぶれてないという意味でも安定している。ちょっとだけ注文をすると、もっとボーカルを前に出すためにリバーブをややひかえて音量を上げてもいいとおもう。

 

アイス

 筆者はこういうノリは大好きである。アイス好きが度を越して人としての枠をはみ出ている感じがいい。ただ名曲としてのポテンシャルが素晴らしく高いだけにいくつかコメントがある。

 Bメロのコード進行にやや不自然さが感じられる。サビの2小節前、「♪この思いだけは」の所にトニックコードであるCが配置されていて、サビへの盛り上がりが停滞する印象を受ける。ここは例えばBメロコード進行を

 F... G... Em... Am...

 Dm7... G... C... C7... (20160501修正)

 F... G... Em... Am...

 F... FonF# ... Gsus4... G...

 というにして、「♪僕の名前を」をラの音から始めるのはどうだろうか。となるとBメロの頭のFにつなぐために、Aメロのラップの部分の最後はC…C7…とする。また、「♪僕のー名前をー呼ぶ」の箇所に曲中最高音のラの音が登場していて、サビが登場する前にピークを迎えてしまっている。ここでさらに「♪僕の名前を」をラの音から始めてしまうと、その問題が余計増強されてしまう。となると、せっかくサビがチャッチーなので、サビを冒頭にもってくるという編曲もあるとおもう。

 この曲はパーティ会場でみんながぴょんぴょんしながら楽しむ曲だとおもうので、最近の流行りの音作りを参考にして、跳ねずにはいられないような演出を追究してほしい。なお筆者はシンセの音はもっと矩形波っぽい高周波を含んだ音のほうが好みである。

 

ののトリオ

 もう3人とも音がすばらしい。完成度が高くて聴かせる曲になっている。メッセージもストレートで良い曲である。 ここまで技術的に色々できるとバンドとしてのキャラ作りもかなり自由にできる。苦労を多く経験した先輩が、生き急ぐ後輩に対して「Take it easy」と言っているような一面や、大学生として「自分らしく生きよう」と決意をあらわにしている一面など、色々な意味を含んだ表現にできる。演奏が上手いので歌詞に説得力が出るのである。

 この曲は冒頭が英語で始まるが、英語の歌詞を歌うときには「t」や「s」など子音の発音を大げさ目に発音すること、またマイクでこれを録音するときには音量のレベルに注意することを気をつけてほしい。この際、DeEsser というコンプ系のエフェクタがあるので適当に必要に応じて使ってほしい。

 

castella

 編曲、各パートの動き、音作りはすごく良い。間奏のバリエーション豊かで工夫が感じられた。ただボーカルの音域が一番歌いやすい高さよりやや低めなのではないかと思うのと、またサビの音域は曲中で一番高くなるようにすることを考えてメロディを設計してほしい。サビの出だしにシンコペーションを使っているが、これが唐突な印象を与えてしまっているので、小節の中でどの拍にアクセントを置くかも全体を見据えて設計してほしい。イントロのギターはタイミング、休符の入れ方をもっと厳密にするといいと思う。

 

2年同期

 この曲は「これまでネガティブな生き方をしてきたが、開き直って変わっていく」という決意をあらわにした曲である。だから、リスナーとの間に交わされるコミュニケーションは「共感した。自分も変わりたい。」や「その決意、しかと見届けた。」とあるべきである。歌詞の内容は過去の自分を強烈に曝け出したものであり、その覚悟が相当なものであると見受けた。今後もその決意で精力的にやってもらいたい。

 編曲はとても良いとおもう。ギターの動きは基本ができていてリフも良いので、もう少し前に出してもっとコード感が出せるといいと思う。ボーカルの音域が せっかく最高ラの音まで出せるので(2:15のあたり)、全体的にメロディをもっと高めに設定できる。ベースは基本に忠実に音を選んでいっているが、もう少し動いてもいいとおもう。ここでさらに「俺は殻を破ろうとしていま限界ギリギリで生きている!」ということがよく分かるような表現がもっと盛り込まれていたら、リスナーの「自分もこうありたいという共感」、「その覚悟は技術的にも裏打ちされているなという安心感」が得られると思う。(20160429加筆)

 

マカロニ

 この曲のサビはマクド○ルドのポテトのCMにそのまま使えそうなキャッチーな曲である。この「CMに使えそうか」、「テレビの歌番組でサビの1フレーズだけ流れてきただけで記憶に残るか」という観点は重要である。是非よさそうなフレーズを思いついたらこうした想像をしてみて、曲のポテンシャルを評価してほしい。

 ミキシングに関して、実は男女の声を共存させるのは難しくて、この曲の場合声の中音域(1kHzくらい)をもっと出して女声が自然な感じになるとよかった。また、ないとうくんはこの曲の中で語りを入れているが、その技はBoarsでも使っていて、もう少し別の歌い方をしたら技の多彩っぷりを印象付けるのに一役買ったのではないかという点で惜しい。

 

SD

 この曲は演奏の技術面が高いだけに、繰り返しが少なくてなおかつ変化が激しいので曲が難解になってしまっているのが惜しい。例えばほぼ同じ構成で歌詞の2番をつくり、シンプルに繰り返すだけで、だいぶん曲が記憶に定着しやすくなるのではないかとおもう。

 

温スト

 まさに王道をいく曲作りで、テーマの選び方、各パートの動きも基本をしっかり押さえている。どんどんこの調子で作曲、楽器の練習をやっていってもらいたいとおもう。

 この曲のAメロのコード進行は

A....... ........   A....... ........ 

A... C#m... D... A... D... E... A.......

で、パンクロック的にシンプルなコードでいくというのならこれで全くOKだと思う。ただ蛇足かもしれないが他にもコード進行はありえて、例えば

A... Bm... C#m... D...     A... E... D... Dm...

A... C#m... F#m7... F#m...   D... E... A... A7...

ともできそうなので、いくつか考えてみてほしい。(20160430コードの表記が間違ってたので修正)

 

ボーカルの会

 春らしいさわやかな景色が思い浮かぶ曲である。ゆったりしたテンポと着実なリズムの刻みは、これまで歩いてきた道、未来へ続く道を一歩一歩を踏みしめるような表現でいいと思う。何人もの声が重なったサビは迫力がある。しかしこの曲もイントロで曲の調性(変ロ長調)がすぐわかるような和音の構成だったらもっとよかったとおもう。

  

 

 

ちなみに

 以下は去年のコンピアルバムに収録されたとある1曲(ねぇねぇネオン)を、筆者がハワイ風にアレンジしたものである。筆者は自称ウクレレ奏者で、このアルバムの他の曲もハワイアレンジのカバーを作りたいのであるが、なにせ本職の実験がアレなので手が出せずにもどかしい思いでいる。また今後いくつか作ってみようと思う。

 

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いっぽう筆者の若いころは・・・

 筆者の若いころ(学部3年、2004年)に作った曲を載せておく。

 

曲名:尿検査再診のお知らせ

作詞:エーちゃん(ドラム、筆者らの代のサークル長)

作曲:tyuiop(昔の筆者)

収録アルバムのタイトル:内部がナイーブ(筆者プロデュース、5曲で15分くらい。)

ジャケ絵:からあげ師匠(現在もお世話になっております)

 

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