実験やめたった シマエナガ編

劇団「実験やめたった」の活動報告

某バンドサークルのコンピアルバムVol5の解説とコメント(その1)

概要

 この記事では、2019年春にリリースされた「某バンドサークルのコンピアルバムVol5」の収録曲について、筆者が、「なぜこの曲は綺麗に聞こえるのか」という解説や、「この曲はこうしたら良くなる」等というコメントをしていきます。

 

自己紹介

 こんにちは。某バンドサークルOBのよしだといいます。出身は岐阜名古屋圏ですが、いまは茨城県の某研究機関で物理学のポスドク研究員をやっています。
https://moeacin.wixsite.com/shanaobog/voices

 

いきさつ

 2019年4月21日、筆者が名古屋に行った際に「Vol5」をスタジオ246でゲットしました。筆者は早速このCDを帰りの新幹線と常磐線で聞いて帰りましたが、クオリティーがとても高くて凄いなと思いました。


 筆者は以前にも、「Vol2」に対して解説の記事を書いたことがあります。 今回、筆者がこうした企画をまたやる理由というのは当時と全く変わっておらず、

  • 出来が素晴らしかったので何か書きたくて仕方がないテンションでいること
  • 筆者の音楽活動の一環、音感の鍛錬、文章を書く練習として
  • 若手のみなさんが今後オリジナル曲を作る際の助けとなればと思い

ということです。

 

 筆者がこの記事を書いてブログという形で公開するのは、筆者自身の修行でもあります。筆者は音楽のセンスというのはどうしたら養うことができるんだろうと自分なりに考え続け、様々な人から教えを受けるなどして(自称)修行をして来ました。そして最近になってやっと、良い曲を作るにはどうしたらいいかという事が見え始めてきたと思います。この経験を語ることで若手のみなさんの技術向上の役に立ちたいと思っています。そして筆者は自分自身が、こういった事を伝えることができる、正確な多くの知識に裏付けられた、説得力を持つ人間でありたいと思っています。というわけでこの記事は、筆者がそれに値する力量があるのか、筆者の音楽のセンスが客観的にどれほどなのかを皆さんに問うものでもあります。是非皆さんにも筆者の力量を審査する目でこの記事を読んで頂きたいと思います。

 

若手の皆さんへ

 この記事は、アルバムを作り上げたという貴重な経験を経た若手のみなさんが、自分たちの到達点を振り返り、さらなる作曲の奥深さを知ってもらえるようにという願いを込めてやります。


 まずは若手のみなさん、アルバム制作、お疲れ様でした。曲作りで一番難しい事は、「自分の作曲の能力が評価されるのが恥ずかしいから人に聞かせたくない」という心理的な壁を乗り越える事だと思います。また曲作りで一番大事なことは、「自分達の考えた言葉と自分達で考えた音楽で自分達だけの世界観を表現したい」という強い思いです。みなさんは実際にアルバムを制作したという実績により、この壁を既に乗り超えたことが証明されています。自信を持ってください。


 さて、自分達の作った曲が、せっかくなら多くの人に聞いてもらいたい、と誰もが思います。そのためには何が必要で、どんな練習をしたらいいのでしょうか。筆者が思うに、必要なのは「作曲のセンス」で、これを養うためには「良い曲が良い曲である理由を言語化して解釈する、そういう習慣をつけること」が有効と思います。というわけでこの企画は「音楽のセンスの言語化」にこだわって全曲解説をやっていきます。

 

#01 うたかた

すごい曲です。さすがシャチックスです。この曲を聞いてまず筆者が思ったことが、「解像度がとても高い」ということです。

 

 まずこの曲の時間的解像度の高さにについて解説します。筆者が電車の中でこの曲を聞いた時、えらいテンポが安定しているなと思いましたが、筆者が茨城の研究所に帰ってきてDAWソフトのトラックに乗せてみた所(図1)、やはりこの曲のテンポが恐ろしく正確であることがわかりました。冒頭からアウトロまで、テンポがBPM=150からほぼズレません。アウトロのところの2小節でBPM=152、その後の2小節でBPM=151になりますが、またBPM=150に戻ってきます。こんなテンポのズレ方は(体感的には全く感じないので全然問題にならないのですが)メトロノームを聞きながらの演奏では起こらない事だと思うので、(メトロノームを聞きながらだったとしても、)ドラムのがっち君のリズムキープが驚異的なのです。そして、それぞれのメンバーの演奏のタイミングも正確です。筆者の体感では、16分音符の刻みに対して10%もズレていないと思います。BPM=150の曲の1拍は60sec/150 = 0.4秒、16分音符の刻みはその4分割なので100msec、ということで、メンバーの感じている時間の解像度は10msecという高い精度だということになります。

 

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図1 DAWに貼り付けてテンポを解析してる図


 次に音作りの観点から。この曲は各楽器の音がはっきり聞こえ、誰が何を引いているのかがよくわかります。ここまで曲の解像度が高ければ、曲を聞いて楽譜を起こすことも可能です。これは音符の情報が劣化なく正確に伝達できているというわけで、(工学部的に言うところの)情報伝達の基本中の基本をしっかりクリアしているということです。さらに、なぜこのようなことが実現しているかというと、メンバー全員の演奏技術がとても高いことはもちろん、音作り、ミキシングも丁寧にやられているためです。各楽器の受け持つ周波数帯域が綺麗に整理されているので、パート同士が衝突することなく伝送できています。もし同じ周波数帯域で似たような音が同時に鳴ると、うなりによって変な倍音が発生して、音が濁ったり、どこかの音が聞こえづらくなったりします。このように聞きやすい音作りのセンスをつけるには、周波数帯域というものを意識するようにしてください。

 

 歌われている歌詞も、曲の感じによく合って、刹那的な爽快感をよく表現しています。アルバムの最初の曲としてふさわしいです。

 

 ただ1点だけ、作曲の観点から「こうした方が良い」というコメントがあります。2:32のところ、コードがDのところです。サビの出だしのコードがトニックのD、その少し手前の「いまのために」のところでドミナントのA、「wow」のところで該当部トニックのDが配置されています。このトニックのDは、サビに向けて盛り上がってきたところで一旦落ち着いた感じを出してしまうので、これは使わないほうがいいと思います。個人的には「いまのために」からずっとAのままが良いのではないかと思います。どうでしょう?

 

(つづく)